自由研究の課題は比較的時間のかかるものが多いですが、
この水性ペンを使った実験は短時間で出来る上、方法によってはいろいろな視点から考察、応用ができる優れたものです。
今回の実験は難しい言葉で言うと
ペーパークロマトグラフィーと呼ばれますが、紙が水を吸い上げる毛細管現象を利用した実験です。
この現象を利用して水性ペンに使用されている色素の分離を行ってみるのがこの実験内容です。
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水性ペンはカラフルな色が売られていますが、それぞれ単色の色素から作られているものではありません。
複数の色を混合して目的の色を作り出されています。
それを確かめて結果を考察するのが今回の実験です。
まずは、
用意するもの
次に
基本的な実験方法
結果を考察
違う視点からの実験の応用
に分けて進めていきます。
とくに、中学生以上では単に使われている色素を突きとめるに留めず、
結果をさまざざまな視点から考察し、サンプルを変えた実験を行ってみるなどの深さが要求されます。
実験に必要なもの
まず、実験を行うために次のものをそろえます。
・水性サインペン各色
基本になる実験には同一メーカーの色をそろえます。
その結果をふまえて、比較する別のメーカーの色をそろえるようにするとよいでしょう。
・コーヒーフィルター
水とともに色素を吸い上げるために使用します。
色素を見るためには白いものが最適ですが、最近は薄茶のものが多いです。
茶色のものはそれ自体色がついているのでこの実験には向いていません。
100均で白いコーヒーフィルターが売られているので入手は簡単です。
・コップ
紙コップなど、色々ありますが、透明のものが外から様子がわかりやすくて便利です。
複数用意しておきます。
・割りばし
割らずにそのまま使用します。
一定時間、ろ紙を動かさずに固定する必要があるので、挟んで使用します。
これだけ用意できたら、準備に取り掛かりましょう。
◆準備
まず、ろ紙をハサミで短冊状に切ります。
長さは2cm×10㎝位にします。(コップの大きさによって調整します)
次にコップに1㎝位水を入れます。
ろ紙の下から2センチくらいの位置にサインペンで点を描くか、横に線を引きます(どちらかの方法に統一します)。
ろ紙の一番上の部分にもどの色か分かるように同じように印をつけ、色の名前を書いておくようにします。
ろ紙の反対側を割りばしに挟み、落ちないように固定します。
コップの水にろ紙の底の部分が浸かるように位置を調整します。
これを組み合わせて、
下の画像の様にしてください。
ここまで準備できたら、早速実験を行ってみましょう。
実験の方法
実験は一色一色やるよりはある程度まとめて行った方が効率的ですが、
数がそれほど多くないので一色ずつ行っても問題ないでしょう。
◆実験の手順
先ほど説明した状態でろ紙を浸けます。
30秒ならすべて30秒浸す、1分ならすべて一分にするなど、
どのフィルターも浸ける時間は一定にします。
①ベースになる実験
この実験をやったことが無い場合には、同一メーカーのカラーをそろえてベースになる実験をします。
各色の分離状態を見ます。
例として、下の画像の「緑1」と「赤1」を見てみると、
複数の色が重なり合っているのが観察できると思います。
それぞれの色について同一時間浸した状態を観察します。
特に注目するのは以下の点です。
・
どの様な色に分かれたか
・
色はろ紙のどのくらい上まで移動したか
・
滲み方にムラはあったか
全ての結果について提示するとネタバレになってしまうので、考察したり、追実験をしたりする際の注目点について次にまとめました。
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結果を考察
ではそれぞれのろ紙が乾いたら、得られた結果を並べて考察します。
その前にペーパークロマトグラフィーの原理を詳しく調べておきましょう。
その原理をもとに結果を考察して、
追実験の準備をして、自由研究をより深いものにしましょう。
◆ペーパークロマトグラフィーの原理
結果を見る際には実験でどのようなことが起こったのか、その原理を調べて理解します。
ペーパークロマトグラフィーは3つの要素があります。
・固定相:ろ紙がこれに当たります。
・移動相:水がこれに当たります。これは展開溶媒とも呼ばれます。
・試料:水性インク
実験では以下のような事が起こって、色が分離します。
1、紙を下を水に浸すと、毛細管現象によって水は紙の繊維の間を上昇していきます。
2、このときに水性インクが水に溶け出し、溶液となって水と一緒に上昇します。
インクの色素には水に良く溶ける親水性の良いものと、水に溶けにくい親水性の悪いものが在ります。
そのため、
3、親水性の良い色素は水とともに上昇しやすく、高いところまで運ばれます。
4、親水性の悪い色素はろ紙の繊維に吸着されやすく、上昇しにくいので、低いところに残ります。
混ざっている色素がこの方法でペーパークロマトグラフィーで分離できるのはこのためです。
この原理をふまえて、下の画像を見てみましょう。
一番左の緑1は二つの色素に分離できました。
水色は親水性が良い色素で、薄い緑は親和性が悪い色素であると観察できます。
隣の赤1は黄色とピンクに分離できました。
黄色は親水性が良い色素で、ピンクは悪い色素と言えるでしょう。
他のそれぞれの色についても色彩の分離と分離した各色の高さを比べて観察結果をまとめます。
ここまでが基本的な水性ペンを使った実験です。
ではこの結果をふまえて、追実験でいろいろな比較をして見ましょう。
違う視点からの実験の応用
さらに実験と考察を深めるために比較する対象を増やします。
その際には先ほど触れた
固定相(ろ紙)、移動相(水)、試料(インク)を1つだけ変えて比較実験をするとうまくいきます。
まずは試料であるインクを変えてみましょう。
◆同じ色を比べる
基本実験に使用したものとは違うメーカーの水性ペンで試してみます。
すべてそろえなくても、数色をピックアップし、同じ条件で色素の分離を比べます。
違うメーカーの赤の水性ペンを使用してみます。
①短冊状のフィルターを2枚用意して、それぞれ同じ大きさの丸を描きます。
②それぞれを割りばしに挟み、基本実験と同じように下側を水に浸します。
③一定時間水を吸い上げさせて、取り出して乾かします。
④色の分離を観察します。
先程の画像の赤1と赤3を例としてみてみましょう。
赤1では黄色が上、ピンクが下になっています。
一方で、赤3はピンクが上、黄色が下です。
このことから同じ色でもメーカーによって色素の性質が異なることが解かります。
赤1では黄色が親水性が良く、ピンクはそれほどでもない、
赤3では逆にピンクが親水性が良く、黄色が悪い、と言えるでしょう。
各色について違うメーカーのものと比較すると面白いでしょう。
◆紙を変えてみる
次に固定相である紙を変えてみます。
この際は基本実験で使用したコーヒーフィルターと別の材質の紙を用意して比べます。
水性ペンは基本実験に使用したどれか任意の色を使ってください。
①2種類の同じ大きさの紙に同じ大きさで丸印を描き込みます。
②同じ時間、水に浸して取り出して乾かします。
③結果を比べて観察します。
おなじインクなので、固定相である紙によってどのくらい吸い上げ方が違うかをまとめましょう。
先程の画像の赤1と赤2の様になったら、赤2で使用した紙の方がより水を吸い上げやすいと言えるでしょう。
◆アルコールを使用してみる
最後は移動相である水を他のものに変えたらどうなるかの実験をして見ましょう。
ここでは黒インクと色が分離した他の任意の色で行います。
先程の画像の黒2を見てください。
黒インクの中には何かそこだけ避けるように色が吸い上げられるものがあります。
そういったインクは何回やっても同じような吸い上げられ方しかしません。
そうした際に、移動相をアルコールに変えて実験してみます。
①今までと同じように二つのコップを用意して、片方は水、片方にはアルコールを入れて準備します。
アルコールは消毒用のもので大丈夫です。
②基本実験と同じフィルターの短冊を2枚用意して、それぞれ同じ大きさで印を描きます。
③それぞれに同じ時間浸けて色素の吸い上げ方を見ます。
④フィルターを取り出し、乾かして観察します。
こうすると水でははじかれたような部分があった黒いインクがアルコールではきれいに滲んで吸い上げられていることが観察できると思います。
これは黒インクが水には溶けないが、アルコールには溶ける成分を使用している可能性がある、と推測できます。
実際にはメーカーの広報に問い合わせるのも一つの方法です。
ただし、答えてくれるかどうかは分かりません。
もう一つ、水でもきれいに分離した色でも行ってみましょう。
①フィルターを2枚用意して、同じメーカーの同じ色でそれぞれに印をつける
②片方を水に、片方をアルコールに浸ける
③一定時間浸けたら、取り出して乾かす
④それぞれの結果を観察する
この実験がうまくいけば結果は
同一メーカーの同じ色なのに、
分離した色の数や順番、吸い上げられた高さが異なっている
はずです。
つまり、移動相となる液体によって、色素は溶けやすくなったり、溶けにくくなったりするのです。
そのため、水とアルコールでは異なった結果が観察できたわけです。
中学生以上の自由研究は一つの実験だけではなく、結果をふまえた追実験を行うことで、考察を深めていくことが良い評価をもらうカギになります。
水性ペンを使ったこの実験は材料をそろえるのも手軽で、
時間もそれほどかかりません。
特に時間をあまり割けないときにはお勧めの自由研究です。
是非参考にしてください。
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