夏の虫と言えば上位に入るのが蝉です。
その姿というよりは、鳴き声の方が印象に残りますね。
俳句や時候の挨拶もその声で季節をかんじたり、思いを馳せたりします。
今回は蝉にまつわる言葉を集めてみました。
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手紙を書く時や俳句を楽しむときにも役立つ知識になると思います。
1、
蝉そのものを表す言葉
2、
蝉にまつわる言葉と表現
3、
蝉が登場する俳句と文例
に分けてみていこうと思います。
蝉そのものを表す言葉
蝉もそれぞれの名前の他に独特呼び方をされることもあります。
◆夏蝉
夏に鳴く蝉の総称。
◆蜩
「ひぐらし」と読みます。
「かなかなぜみ」とも呼ばれます。
秋の季語でその鳴き方は夏の終わりを感じさせます。
◆寒蝉
読み方は「かんせん」
秋に鳴く蝉のことで、蜩(ひぐらし)、つくつく法師などをさします。
◆秋蝉
俳句では秋の季語とされ、秋になってもなお鳴いている蝉を指す。
これも蜩やつくつく法師などが代表です。
◆春蝉
もっとも早く鳴きだす蝉のこと。
季語としては夏であるが、4月~6月にかけて鳴くのでこう呼ばれる。
◆初蝉
夏の季語で、春蝉の異名です。
または、その年初めて鳴く蝉の声を指します。
◆松蝉
これも春蝉の異名です。
◆熊蝉
透明な羽をもつ大きな蝉で夏の季語です。「シャーシャー」と鳴く。
東京よりも南の地域ではよく見られます。
◆馬蝉
大きくて羽根の透明なクマゼミの別名です。
◆油蝉
おそらく日本で一番知られた蝉です。
普通に見られて、一番夏らしい蝉です。
◆夕蝉
夏の季語で、夕方に鳴く蝉の総称です。
俳句の中にもよく出てくる言葉です。
◆夜蝉
夜鳴く蝉の総称です。夏の季語。
◆唖蝉
「おしぜみ」と読みます。夏の季語で、鳴かない蝉の事。
蝉は雄だけが鳴くので、雌の蝉のことを指します。
◆姫春蝉
蝉の一種。
春蝉よりも体色が淡く、日本国内でも天然記念物に指定している自治体が多いき希少な蝉。
◆法師蝉
つくつく法師の別名。
実はヒグラシよりもこちらの蝉の方が長生きで、秋の蝉として知られる。
先程も触れた様に「寒蝉」ともいわれる。
◆蝦夷蝉
蝉の一種で、透明な羽をもち、「ギャー、ギャー」と高い声が特徴。
北海道では平地でも見られるが、本州より南では山地の松の林などに生息する。
◆ちっち蝉
蝉の一種で、羽の先まで3センチほどの大きさです。
秋の季語で、黒い体に褐色の門が特徴。
夏から秋にかけて「チッチッチッチッ 」と鳴く。
◆にいにい蝉
くすんだ黄褐色の体に緑色や茶褐色の紋がある。
夏の季語で3.5㎝位の小さな蝉です。
◆みんみん蝉
透明の羽をもつ蝉。
大きさは油蝉と同じくらいです。
「ミーン ミーン」と高い声でなく鳴き方が特徴です。
◆深山蝉
「みやまぜみ」と読み、みんみん蝉の別名です。
学術的にはもっともっと種類はあるのかもしれませんが、
俳句や手紙を書く時にこれだけ知っていると季節感がグッと深く表現できるでしょう。
蝉にまつわる言葉と表現
まず、蝉ではないけれど蝉と名の付く生き物がいます。
◆蝉海老
体長30センチに達する、海老の一種。
◆川蝉
「かわせみ」と読みます。
水辺に生息する小鳥で、鮮やかな水色の体が特徴です。
名前は当て字で蝉とは関係ありません。
◆耳蝉
「みみずく」と読みます。
体長18㎜くらいの昆虫です。
頭部が幅広く、胸部背面に耳状の突起が一対あるので前から見ると鳥のミミズクに似ているからこの名前がつきました。
◆角蝉
カメムシ目ツノゼミ科の昆虫、蝉に似た体形で黒い虫です。
背面部に角上の突起があり、アザミやヨモギにつく。
◆蝉宿蛾 蝉寄生蛾
成虫は小型の蛾です。
木の幹に産卵し、要注は蜩やつくつく法師などに寄生して成熟します。
成熟すると降りてきて蛹になります。
寄生された蝉は腹の部分い白いロウを分泌されているので遠目にもわかります。
「蝉」の名前がついた人物もいます。
◆蝉丸
平安時代の前期に活躍した歌人。
◆藤堂蝉吟
江戸時代前期の俳人
◆添田唖蝉坊
「そえだあぜんぼう」と読みます。
明治・大正期に活躍した演歌師。
生活や文化に関わる言葉にも蝉が登場します。
◆蝉時雨
多くの蝉が一斉に鳴く様子を時雨の音に例えています。
夏の季語。
蝉しぐれも、油蝉やミンミン蝉など夏の蝉から、蜩やつくつく法師に変化していくと季節の移り変わりを感じます。
◆空蝉
もともとは、この世に生きている人、「現人(うつしおみ)」が訛ったものです。
今は「現世」や「セミの抜け殻」を意味するようになりました。
「源氏物語」や能の演目、一青窈の楽曲にもありますね。
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◆蝉衣
蝉の翅の様に薄く透けている夏向きの着物のことです。
夏向きの涼しい衣をさします。
「蝉の衣」「蝉の羽衣」とも呼ばれます。
◆蝉の羽
蝉衣と同じで、薄い着物や布を指します。
また、衣服を重ねてきたときの色の取り合わせの一種を指すこともあります。
◆蝉吟
「せんぎん」と読みます。
セミが鳴くことや、その声を指します。
また、江戸時代の俳人にもこの名前の人がいます。
◆蝉声
蝉の鳴く声や
蝉の様に絞り出すような苦しげな声のことを指します。
古典文学の中にもこの表現があります。
◆蝉脱
「せんだつ」と読みます。
意味はセミの抜け殻や世俗から解脱しているという意味合いでつかいます。
◆蝉口
帆柱の上の部分や長い竿に付けて用いる小さな滑車の事。
または、旗竿、帆柱などの部分の名称、網や干物取り付け口を指す。
◆蝉本
蝉口と同じ意味。
◆蝉の羽月
陰暦の6月のことを指す。
蝉の翅の様な薄い着物を着る月という意味があるそうです。
◆蝉茸
ボタンタケ科のキノコ。
蝉の蛹に寄生して羽化前に地中で宿主である蝉を殺して、キノコを出します。
冬虫夏草の一種。
◆蝉笛
オモチャの一種。
竹製の笛の上に土で作った蝉を付けたもの。
吹くとセミの鳴き声に似た音を出す。
◆蝉氷
冬の季語で、蝉の様に薄く張った氷のこと。
◆蝉籠
蝉の形をした籠の事。
茶道などで花を生けるために使われる。
◆蝉鬢
「せんびん」と読みます。
蝉の翅の様に透き通って見える鬢の事から転じて、女性の美しい髪を指すようになった。
美人や美女を指すこともある。
◆蝉折れ
男の髪の結い方の一つ。
元禄頃に流行した髪型で、鬢の先を反らせて蝉の形にしたもの。
この他に竜笛という笛の一種を指すことある。
◆蝉噪蛙鳴 蛙鳴蝉噪
字のごとく、蝉や蛙が騒足く鳴き騒ぐこと。
ここから転じて、騒がしいだけで何の役にも立たないことや下手な論文、文章の例えに使われる。
◆蝉生る
蝉が羽化すること。
幼虫は地中で3年から17年くらい過ごし、地上に出てきて羽化する。
成虫の命は1週間と言われるが、実際は10日から20日くらいまでと差がある。
◆落蝉
寿命を終えて地面に落ちた蝉のこと。
死期が近づいて弱り、地面でもがく姿の蝉も指します。
蝉が登場する俳句と文例
蝉が登場する有名な俳句をいくつか紹介します。
使われている意味が分かっていると味わい方も深くなります。
◆松尾芭蕉
閑けさや岩にしみ入る蝉の声
撞鐘もひゞくやうなり蝉の声
いでや我よきぬのきたり蝉衣
やがて死ぬけしきは見えず蝉の声
◆三橋敏雄
蝉の殻流れて山を離れゆく
◆河原枇杷男
空蝉の両眼濡れて在りしかな
◆正岡子規
初蝉の声ひきたらぬ夕日哉
唖蝉のかしこさうなり浮世也
◆河東碧梧桐
春蝉のひやひやと鳴くや山の松
◆長谷川櫂
夕暮の水にぶつかる秋の蝉
俳人以外では、
夏目漱石も
鳴き立ててつくつく法師死ぬる日ぞ
と詠んでいます。
源氏物語では夕顔で
蝉の羽もたちかへてける夏衣
という一文も出てきます。
蝉と日本の夏との深いかかわりが分ります。
最後にいくつか手紙で時候の挨拶をするときの例文を見てみます。
◆時候の挨拶で蝉を使った例文
6月を前にして初蝉の声を聞きました。今年は夏が早く訪れそうです。
庭の塀の空蝉を見て、巣立った命に思いを馳せる今日この頃です。
夕涼みに蜩の声を聞くと暑さも少し和らぐようです。
裏の山から聞こえる蝉時雨が西瓜の味を引き立てくれます。
今朝は冷え込みが一層厳しく、バケツに蝉氷が張っていました。
落蝉の姿に季節の移り変わりと命の儚さを感じます。
夏は何かと手紙などを出す機会が増えますから、
時候の挨拶にも蝉にまつわる言葉を使えると表現が豊かになります。
是非参考にしてください。
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