5月の時候の挨拶でよく使われる季語が「薫風」です。
いかにもさわやかな印象の季語ですが、今回は使う時期とその由来にも触れていきます。
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以前にも初夏の時候の挨拶として
時候の挨拶 5月に出す案内状 ビジネスと個人の場合で紹介していますが、
今回はもっと深く紹介していきたいと思います。
薫風の候の意味
薫風とは
青葉の香りを運んでくる風
さわやかな風
を意味します。
近年は気候の変動で多少季節感がずれたり、夏の訪れが早かったりしますが、
薫風という季語を使うにふさわしい時期を確認してみましょう。
薫風という季語を使える時期
「薫風」は
初夏の季語に分類されます。
◆初夏
暦の上で初夏は
二十四節気の
立夏(5月5日ごろ)から
小満(5月21日頃)を過ぎ
芒種(6月15日頃)の期間までを指します。
この二十四節気をさらに細かく分けた七十二候では
・立夏
蛙始鳴(かわずはじめてなく):蛙が鳴きはじめ、活動を始める(5月5日ごろ)
蚯蚓出(みみずいずる):蚯蚓が地上に出てくる頃(5月10日頃)
竹笋生(たけのこしょうず):タケノコが出てくるころ(5月15日頃)
・小満
蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ):蚕が桑の葉を盛んに食べだす(5月21日頃)
紅花栄(べにばなさかう):紅花が咲き誇る頃(5月26日頃)
麦秋至(むぎのときいたる):麦の穂が実り始めるころ(5月31日頃)
・芒種
蟷螂生(かまきりしょうず):蟷螂が卵から孵る頃(6月5日頃)
腐草為螢(くされたるくさほたるとなる):蛍が舞い光を放つころ(6月10日頃)
梅子黄(うめのみきばむ):梅の実が黄ばんで熟してくるころ(6月15日頃)
に分けられます。
芒種以降はどちらかというと初夏のすがすがしさというよりは梅雨入り前の雰囲気が強くなってきます。
後で触れますが、薫風は、5月上旬から6月上旬に吹く風、を意味します。
ですが、6月に入ると梅雨入り前の雰囲気が色濃くなるので、
薫風という季語を使うのは
立夏から5月いっぱいくらいまで(5月5日ごろから5月31日頃まで)
が適当です。
薫風の由来
薫風は
中国由来の言葉のようで、南から来る風を意味します。
唐の時代に
「薫風自南来」
と謳われ、
南からやってきて、すべてのものを養い育てるとされています。
先程の七十二候でも植物が芽吹き、生き物が活動を始める時期であることから
初夏を象徴する季語に相応しいですね。
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似た意味の言葉
日本にも薫風と同じ時期に使える風を表す季語があります。
それは
青嵐(あおあらし)
です。
その由来は
青葉の頃に吹く強い南風なので、青嵐、と言われています。
この青嵐は薫風よりも強い風を意味します。
強めの風なので、通常の手紙などに使われる時候の挨拶には似合わないかもしれませんが、、
昔、物流の要であった帆船には欠かせぬ推進力として利用され、自然の力に頼っていた昔の生活にはありがたい風だったのでしょう。
季語として使える時期は
5月上旬から7月にかけて
で、薫風よりも期間は長くなります。
使い方の例文
では薫風の使い方の例を挙げてみましょう。
◆改まった表現をする場合
主にビジネス関係の文書、目上の方への手紙などでは時候の挨拶も改まった形にします。
基本の形は
季語+「~の候」「~のみぎり」「~の折」+相手を気づかう言葉
です。
・ビジネス文書の例
薫風の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
薫風の候、貴社におかれましてはますますご隆盛の段、心からお喜び申し上げます。
など。
多くは定型句が会社で決まっていて、それに当てはめればよいので難しくはないでしょう。
特にビジネス文書で注意する表現等についてはこのブログの記事
時候の挨拶 7月中旬にビジネスで使う表現で紹介していますので、書く際の参考にしてみてください。
・個人間のやり取りの例
薫風の候、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
薫風の候、○○様には一段とご壮健のことと存じます。
薫風の候、皆様にはますますご健勝のことと拝察いたしております。
また、薫風という言葉を使わなくても同じ季節感を出す言葉を使うことも少なくありません。
風薫る5月、お変わりなくお過ごしのことと存じます。
薫風が心地よく感じる季節となりましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか
若葉を揺らす、さわやかな風が吹く季節となりました。○○様、お変わりありませんか。
など。
◆注意すべき点
特に普段使いなれない季語や言い回しを使う場合に気を付けなくてはいけないことがあります。
それは
季語を重ねて使ってしまうこと、です。
改まった言い回しで、
「薫風の候、~」といった場合にはこれ以上季節を表す表現を続けないようにします。
「~の候」という言葉には「~の季節」という意味が含まれますから、
「薫風の候」は「初夏のさわやかな風が吹く季節」という意味になります。
ビジネス文書ではこういった間違いは起きにくいでしょうか、
個人間で交わされる手紙には起こり得ます。
例えば
「
薫風の候、初夏のさわやかな風の吹く季節となってまいりました。」
この場合は「
薫風の候」か「
初夏のさわやかな~」のどちらか一つになるのが正解です。
季語が二つ重なる、俳句で言うと二重季語の状態です。
このことが頭にあれば相手に失礼な印象を抱かせてしまうことも、くどい印象を抱かせてしまうこともないでしょう。
「薫風」は5月の雰囲気を伝えやすい季語です。
プライベートな手紙や仕事の文書でぜひ使ってください。
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