理科の自由研究は準備するものも多く、自宅で行うには手間のかかるものが多くあります。
中学校レベルの実験では特にその傾向が強くなりますが、
今回は簡単に出来るものとして10円玉をきれいにする実験を紹介してみます。
この実験は小学生もよく行うものですが、中学生レベルで行うには起こっていることを考察して、化学式で説明しみてみます。
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実験自体は簡単でも、時間もある程度かける必要がありますから余裕をもって行ってください。
実験の方法
実験の方法は小学生の場合と変わりません。
身の回りにある調味料に10円玉を浸けてきれいにしてみます。
◆用意するもの
10円玉複数
各種調味料
漂白剤など試してみたいもの
底の浅い容器など
◆実験のやり方
実験手順は同じですが、対象を比べるには二つの方法があります。
①一つの調味料に対して10円玉を2枚使う
同じくらいの色の10円玉を2枚用意して行います。
例えばお酢に浸けて実験してみる場合に片方をお酢に浸けて、もう片方を付けないで取っておきます。
この2枚を実験の後に比べます。
②一つの調味料に対して10円玉を1枚使う
10円玉の半分にセロテープなどを密着させて貼り、調味料に触れないようにします。
それを調味料に浸けて、実験が終わったらテープをはがし、触れている部分と触れていなかった部分を比較します。
やりやすい方を選択して行えばどちらでも問題ありません。
どちらの実験でもデジカメなど画像を記録できるものを用意して実験の直後の状態を保存することがたいせつです。
せっかくきれいになった10円玉も時間が経過するとまたもとのようにくすんでしまうこともあります。
では実際に実験を行ってみましょう。
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10円玉をきれいにする実験の実際
この実験は人気のユーチューバーも取り扱っているほどポピュラーです。
この実験を見ると結果はある程度ネタバレになってしまいますが、中学生レベルでは10円玉がきれいになった原因を考えて結論を出します。
それも踏まえて実験をしてみましょう。
◆実験を行ってみる
まず、10円玉を必要枚数用意します。
動画にある調味料を全てを用意することもありませんが、実験結果を考察することを考えると次のものは揃えておいた方が良いでしょう。
お酢
マヨネーズ
醤油
味噌
塩素系漂白剤
ある程度結果のネタバレになりますが、明らかな違いを出すためには必要です。
では実際に実験してみましょう。
動画にもあるように各調味料で違を出すにはそれなりの時間がかかります。
少なくとも結果が出てから調べてまとめるには、実験を含めて丸二日くらいは時間の余裕を持っておきましょう。
では始めます。
①10円玉の汚れを落とす
本番に入る前に10円玉の色に関係ない汚れを落とします。
手垢による汚れなどを最初に取り除いておきます。
これらの汚れは主にたんぱく質なので、中性洗剤をつかえば簡単に取れます。
実験前に全ての10円玉を洗っておきましょう。
クレンザーなどが入ったものだと表面を削って下地が出てきれいになってしまうことがあるので注意します。
②10円玉を浸けるものを用意する
各調味料と洗剤を小さな容器に分けて準備します。
長い時間放置するので、邪魔にならないところ、だれも触れない場所を選んで実験しましょう。
③10円玉を入れる
それぞれの容器に10円玉を入れます。
そのまま放置します。
動画では24時間放置しましたね。
きちんとした変化を確認するにはある程度の時間が必要です。
④取り出して観察する
10円玉を取り出したら、ふき取って実験前と比べます。
画像記録は自由研究をまとめる時にも必要なので必ず撮るようにします。
⑤結果を考察する
きれいになったものとそうではないものの違いを考えます。
結果の考察をする
実験結果をはっきりさせるために必要なものとして先程、
お酢
マヨネーズ
醤油
味噌
塩素系漂白剤
を挙げました。
調味料は単に酸だけが入っているものと、酸と塩が入っているものを意図的に用意しています。
おそらく結果は次のようになるのではないでしょうか。
・お酢:きれいにはなったが思ったほどではなかった
・味噌など:光沢もあり、一番きれいになった
・塩素系漂白剤:色が黒くなった
実験がうまくいくとこのようになると思います。
ならなくても、その結果に照らし合わせて、なぜうまくいかなかったのかを考えるようにします。
では、それぞれの結果に対して、調べてみましょう。
◆結果の考察
10円玉は95%が銅、残りが亜鉛とすずで出来ています。
もともとはピカピカの10円玉が茶色になるのは表面が空気に触れているからと考えると・・・。
・お酢だけの時の表面の変化の理由
10円玉の表面は空気に触れているので、酸化しているために茶色くなっている。
お酢などに含まれる酸はこの酸化した銅を取れやすくる作用がある。
実際の化学式は
CuO + 2 CH3COOH → Cu(CH3COo)2 + H2O
酸化銅に酢酸が加わって、酢酸銅と水となる。
酢酸銅は水やエタノールに溶けやすくなる。
この現象が起こり、表面の酸化した銅が落ちて、その下にある新しい面が出てきてきれいになった。
と考えられます。
ただ、十分な光沢が得られていないのはどうしてか?
・味噌の時の表面の変化の理由
お酢そのものよりも味噌や醤油などの調味料の方がきれいになったことから、
味噌に含まれる酸の方がより強力に酸化銅を水に溶けやすくするのではないか?
醤油などに含まれる塩が関係しているのではないか?
という仮説が立てられます。
これを確かめるうえでも味噌のほかに塩分が入った調味料を複数組み合わせた実験をしてみましょう。
どれもがお酢単独の時よりきれいになれば、こんな考え方もできます。
実際に調味料に含まれる塩の塩素イオンが触媒の役割りをして酸の働きを助けるといわれます。
もし、酸の働きが同じだとすると塩の役割が大きいといえますね。
このあたりは深く調べる必要があります。
・塩素系漂白剤の変化の理由
この場合は表面はきれいにならず、黒ずみました。
このときの変化は
NaClO+Cu2O→2CuO+NaCl となります。
漂白剤の成分、次亜塩素酸ナトリウムが酸化銅に反応して、酸化銅と塩化ナトリウムになった、という化学式です。
普通の10円玉の茶色の表面はCu2Oで表される酸化銅Ⅰと呼ばれるもの、
CuOで表される酸化銅Ⅱと呼ばれるもので黒色です。
結果として新しく酸化銅を作り出してしまい、黒くなってしまいます。
調べるとこんな感じになりました。
ここでまた、疑問が出てきます。
◆新たな疑問
お酢の酢酸での化学式は酸化銅Ⅰとの反応のもの。
つまり、黒ずんだ酸化銅が溶け出しやすくなった状態です。
最後の塩素系漂白剤の結果の化学式は茶色の酸化銅Ⅱが黒の酸化銅Ⅰに変化したもの。
ということは、酸にはどちらか片方を落とすのに有効なものと両方落とすのに有効なものがあるのではないか?
食塩と酢(酸)の両方が入っている調味料が10円玉を一番きれいにした結果から、この二つが合わさるとどちらの酸化銅にも有効なのではないか?
という仮説も考えられます。
実際に調べるとかなり難しいレベルになると思います。
中学生で習う範囲の理科で結果が出るとは限りませんが、それを越えて調べてみる事も大切です。
結果だけを発表する小学生の自由研究とは大きく異なるので、
実験そのものは簡単ですが、かなり内容の濃いレポートが出来上がると思います。
実際にそれを確かめるには、家庭にある調味料などではなく薬品を使った本格的な実験が必要かもしれません。
夏休みに行える理科の実験としては結果を踏まえてこのようにいろいろと掘り下げるだけでも有意義な経験になると思います。
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